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私が医学部学生であった20数年前の、仲間内での会話を今でも思い出します。「近い将来、癌は薬で完治する時代になるので、外科医の仕事は無くなっていくよね」。さてその後、分子標的薬開発などの目覚ましい進歩はあったものの、癌は容易に完治する疾患になったでしょうか。答えは自明であり、悪性新生物による死亡率は、増加の一途を辿っています。なかでも膵癌は依然として人類の脅威です。米国癌学会の予測によると、他の癌種の死亡数が減少に転じていくのに対して膵癌による死亡数は今後も増加し続け、2030年には肺癌に次いで死因の第2位になるとされています。不治の病とされて久しく、確実な診断・治療方法はいまだに開発されていません。しかしそれでも、各専門家の弛み無い努力により、少しずつ有効な手法が報告されてきていることもまた事実です。本書では、現時点において国内有力施設の診療の主力であり、さらに学会等での研究の中心的存在であるいわば脂の乗り切った膵臓臨床医を、僭越ながら選出させて頂きました。癌治療に関する書籍は数多に存在しますが、編者と同じ中堅世代のみで構成した執筆陣であるのが本書の特徴です。実際に日々ベッドサイドに立ち、患者のために汗を流し、悩み、より有効な手法を模索している、本邦最高の臨床家・研究者が結集して頂いたことに、心から感謝しています。また本書では一般的な標準治療だけでなく、斬新かつ有望な最先端治療を「最新トピックス」として紹介させて頂きました。本書の内容は、従来の国内外のそれと比較しても全く遜色ないどころか、現時点でのBest of Bestであると胸を張れるものです。そのため書名を「新世代のバイブル」と自信を持ってつけさせて頂きました。しかしこの最先端の内容も、数年後には時代遅れの古いものになっているでしょう。そしてその時、新しい診断・治療方法の開発の先頭に立っているのも、また本書の執筆陣であることは疑う余地がありません。さらに、本書を参考にして発奮したより若い世代が台頭していることも期待しています。最新かつ最高レベルな本書の内容が一瞬で色褪せるほどの、膵癌診療の迅速な進歩を願ってやみません。最後に改めて、大変ご多忙にも拘わらず執筆をご快諾くださいました諸先生に、そして本書の編集に声をかけて頂いた親友である川井 学先生に、最大級の感謝を申し上げます。2017年4月発刊にあたって富山大学大学院 医学薬学研究部消化器・腫瘍・総合外科 教授  藤井 努

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