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膵癌は罹患率と死亡率がほぼ等しく、5年生存率もいまだ5~10%程度であり、21世紀に残された難治性癌といわれています。難治性癌である膵癌に対応するために早期発見のための診断技術の向上とともに、外科治療、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療の確立が急務であります。膵癌の診断・治療成績向上のためには内科医・外科医・放射線科・病理医の横断的な連携による集学的治療が必要不可欠です。本書では『膵癌診療ガイドライン』に準拠した膵癌の最新の診断・治療の解説そして膵癌登録や臨床試験の意義など12のテーマを取り上げるとともに、新しい治療法やadvanced techniqueを「最新トピックス」として記載することによって、膵癌に関する各分野の最新知識の結集を目的として編集しました。膵癌の診療・治療はこの10年で目覚ましく進歩し、診療・治療成績は向上してきています。しかし、膵癌の克服のためにはまだ多くのブレークスルーしなければならない課題が残されています。世界のホームラン王である王貞治氏は「努力は必ず報われる。報われない努力は、まだ努力と呼べない」と言っております。膵癌に携わる医師として、難治性癌だから諦めるのでなく、難治性癌だからこそ克服するこれまで以上の努力が必要だと考えます。メディカ出版の方から「膵癌の診療・治療」に関する書籍を刊行するというお話をいただいたとき、編者の藤井努先生と『新世代の膵癌診療・治療バイブル』というタイトルにしました。本書のタイトルである『新世代の』は『新世代による』と『新世代のための』という2つの意味を込めております。現在の膵癌の診療・治療に最も熱く取り組んでおられる次世代を担うトップランナーの先生方に執筆をお願いいたしました。そして膵癌の診療・治療のさらなる飛躍を目指すという、次世代の若手医師へのメッセージを込めてご執筆いただきました。さらにタイトルの『バイブル』には当然『聖書』という意味がありますが、『自分の考え方などに影響を及ぼした重要なもの』という意味もあります。本書が若手医師の日常診療のバイブルになることを願うと共に、これからの膵癌診療・治療の発展を担うであろう若手医師の創造力をインスパイアすることの端緒になれば編者としてこれ以上の幸せはございません。最後に、ご執筆にご尽力いただきました今最も御多忙な先生方、編者として多くの斬新なアイデアをお出しいただいた藤井努先生、メディカ出版の方々のお力添えにこの場をお借りして心から感謝の意を表します。2017年4月和歌山県立医科大学外科学第2講座 准教授 川井 学序にかえて

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