監修にあたって奈良県立医科大学 手の外科学講座教授面川庄平 手・手指の外傷は日常診療で多くみられますが,適切な初期診断と治療選択が重要であることは言うまでもありません.一見軽微な外傷でも初療で見逃されると手の障害が残存することがあります.また,外傷や治療に伴う合併症から重篤な後遺障害が発生することもあります.スポーツ外傷や労働災害による手の損傷は,早期にパフォーマンスを回復させることが求められ,ハンドセラピストによる後療法の介入が重要となります. 今回,豊富な写真やイラストと動画で手術手技を解説し好評を得ている『整形外科Surgical Technique』誌の別冊として,『手・手指外傷の診断・保存的治療・手術』をまとめた書籍を企画しました.本書は2015年に刊行した田中寿一先生企画の『実践! 手・手指外傷の診断・治療のテクニック』をバージョンアップしたものです.執筆者を新たにして構成し,内容面では日常診療で頻繁に遭遇する「橈骨遠位端骨折」を新たに企画しました.また,手関節周囲の靱帯損傷を理解するために,「手根靱帯損傷」や「月状骨周囲脱臼」を追加しました.さらに,後療法が特に重要である外傷として「屈筋腱損傷後のリハビリテーション」を加えました. 本書を構成する各執筆者は国内外で活躍されている手外科専門医,ハンドセラピストの先生方であり,手外科診療の「極意」が多数含まれています.本書が手の外傷を扱う医療者のための必携の一冊となり,手外傷の治療成績向上のために役立つことを期待します.
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