12者では注意を要する.頚椎は過伸展しないようにし,顔は正面を向ける.頭を固定してしまうと,術中に上肢を牽引したときに頭が動かず腕神経叢が牽引されてしまうため頭は固定しない(図4).肩枕を使用するが,人工肩関節置換術など関節窩の操作を行う手術では,細くて硬めの肩枕を使用し,肩甲骨の内側縁と胸郭の間に入れて肩甲骨が内転しないようにすることが重要である(図5).肩甲骨が内転してしまうと関節窩を正面から見ることが困難となり,手術の難度が上がってしまう.また,術中体位によって尺骨神経障害・腓骨神経障害が起こらないよう,健側の肘と両膝の外側がきちんと除圧されているか確認する.執刀前に最終的な体位を術者が確認することも重要である.手術機器直視下手術 基本的な筋鉤などのほかに,V字筋鉤,扁平鉤,弯鉤,Brownのデルトイドレトラクター,リングレトラクターなどを用いる(図6). 針は5-7号と10-13号程度の角針を用意する(図7). 弯鉤はその名の通り鉤の部分が弯曲しており,幅広くレトラクトできることと,三角筋などの筋腹や橈側皮静脈などを傷つけることを防ぐことができる.V字筋鉤は鉤の部分がV字型になっ図6 準備するレトラクター(文献3より)図7 角針(文献3より)図5 肩枕による肩甲骨固定(文献3より)①V字筋鉤,②扁平鉤,③弯鉤,④デルトイドレトラクター①13号角針,②5号角針①④③②①②ており,共同腱をレトラクトするときに用いたり,腱板修復時にはV字の隙間から針を出すなど,腱板に糸をかけるときなどに有用である.扁平鉤は肩峰下除圧を行うときに骨頭を押し下げるときや上腕骨骨切りの際などに有用である.Brownのデルトイドレトラクターは人工関節置換術などで,骨頭を脱臼させ保持するときに用いる.骨頭を安定して脱臼位にできることと三角筋を傷つけない利点がある.リングレトラクターは人工肩関節置換術時やオープンバンカート修復などの関節窩の展開時に用いる.リングを関節窩後方にかけて,上腕骨をレトラクトすることにより関節窩の展開をよくする. 5-7号角針は腱板に糸を通すときに,10-13号角針は骨に糸をプルアウトするときなどに用いるが,両者とも針先が曲がることがある.曲がっ
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