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901はじめに 周術期にはさまざまな合併症が起こり得るが,手術体位や手術器具の使い方などに気を付けることにより防ぐことができる合併症もたくさんある.本稿では肩関節手術において合併症を起こさないための注意点について説明する.手術前の患者情報 近年高齢化に伴い,内科的合併症のある患者にも手術が必要になることが多くなってきており,術前に既往歴を把握することが必須である.抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬) 抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬)を内服している患者では,基本的に休薬が必要となるため,内科の担当医に休薬が可能かどうか必ず確認後,術前から周術期にかけて各種薬剤の休薬期間の休薬を行う.術後は大量出血などの合併症がないことを確認したうえで,できるだけ早期に休薬した抗血栓薬の再開を行う.冠動脈ステント留置患者の場合,ステント留置初期はステント血栓症を発症する可能性が高いため,薬物溶出性ステントでは12ヵ月,ベアメタルステント(従来のステント)では1ヵ月間は待機手術を避けるべきといわれている1).深部静脈血栓症予防 また深部静脈血栓症予防も重要である.上肢手術は『肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン』では低リスクに位置づけられている(表1)2).上肢手術は遅くとも翌日には離床できるため,特別な血栓予防は必要ないとされている.しかし近年高齢化に伴い,付加的な危険因子を持つ患者も多いため(表2)2),症例に応じて弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法の使用(図1),術後早期からの下肢の自他動運動を促すことなどが必要となる. 術前の深部静脈血栓症のスクリーニングでは,D-dimerを用いている.D-dimerは陰性的中率が92.7〜100%と高く4,5),D-dimerが陰性であれば高率に下肢静脈血栓を否定することができ,もし高値の場合は下肢静脈エコーや造影CTを考慮する.術中・術後脳梗塞の予防 術中,術後脳梗塞の予防も考慮する必要がある.後で術中体位の項で述べるが,頭を高く上合併症をきたさないために必要な体位の取り方と手術器械と術後の管理井上和也●奈良県立医科大学整形外科スポーツ医学講座講師Web動画ポイント既往歴,内服および内科的疾患の有無など患者背景を理解しておく.手術がやりやすく,かつ神経麻痺などを起こさない体位を取る.手術に必要な器械を理解し,準備し確認する.✓✓✓

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