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3推薦のことば晴らしくいい本ができ上がった.素直にうれしく思う.当時研修医を終えたばかりの矢倉先生にとって本院は初めての出向病院で,整形外科,特に外傷に大きな熱意をもち本院に着任された.以後毎日毎日救急,外来からの手術症例に対し愚直なまでにすべての症例に対しAO分類を行い,術前計画を麻酔,体位,シアターセッティング,皮切,整復方法,固定器械,術後固定,後療法に至るまで綿密に1枚にまとめ手術室に掲示し手術に臨んでいた.それは私の指導でもあったが,私自身AOコース,自身のAO facultyの経験から必要不可欠であり後進にぜひ伝えたい事柄であった.術後には計画と異なった部分を赤ペンで訂正し1例の症例の設計図が完成する.1年間で約500症例(500枚)の術前計画(設計図)ができ上がる.それらをファイルに綴じただけでも1冊の貴重な資料(library)となる.よく似た外傷が来た場合にはその資料からヒントを探す作業を繰り返す.彼の後任の医師たちもコツコツと同様の作業を行っている.私自身作図はもちろんであるが,初療での画像からすでに術後をイメージし入院直後に再び考え,術前説明前に考え,手術前日の帰り道,入浴中,就寝前のベッドの中,手術当日の出勤時,術直前の手洗い時の7回はほぼ必ず術前計画を頭の中で反芻していた.これは現在でも場面は少し減ったが術前に最低5回は繰り返し頭の中で術前計画を反芻している.しかしながら最近では後輩の作図が非常に立派であるので密かにそれらに期待し,楽しみにしている. 私はAOコースでfacultyとして術前計画,骨折分類の講義を担当することが多く,それらの重要性を認識していた.また,手術はチーム医療であり皆でゴールを目指し良好な結果を出さなければならない.手術内容が執刀医の頭の中にあるだけでは他のメンバーにはゴールまでの過程が見えず,また現在地もわからない.チームメンバーにとってゴール地点がわからず,砂漠の中を黙々と走っている状況はあり得ない.手術室に術前計画の図を掲げることで,執刀医はもちろん助手,清潔・外回り看護師,麻酔科医の皆が手術の道程,到着点,難関場所を理解することでそのチームとして最高のゴールに到達することができる.その結果スムーズな進行により手術時間も短縮される.術中にはトラブルがつきものであるが,術前計画が十分に練られていれば術中に考えることはトラブルに対する対処法のみとなる. 私は矢倉先生の術前計画のおかげで助けら素

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