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5本を読みながらさまざまなシチュエーションを反芻することが許される.手術体位,使用インプラント,手術器械,輸血の有無などを考えながら万全な準備で手術に臨むことができれば,手術中のトラブルにも柔軟に対応,解決できる.このような経験が蓄積されれば,短時間で術前計画が可能となり緊急手術にも対応しやすくなる.術前計画は手術がうまくなりたい外科医にとって,最も有効かつ必須の学びなのである. 本書は術前計画の方法を細部にわたり教えてくれるため,骨折の手術技術を高めたい医師にとって最高のパートナーになるだろう.本書を通読すれば,著者と一緒に考えながら多部位のバーチャル骨折手術を経験することもできる.手術を成功させ,最良の結果を得たければ,ぜひこの本を座右に据えて矢倉先生と議論しながら,これから手術をする骨折の適切な術前計画を立てるのが近道であろう.れだけ丁寧に術前計画が練られていれば,それを実践された患者は幸せだろう」というのがこの本を読んだ率直な感想である.術前計画の重要性はよく述べられるが,本書のようにその方法を細部にわたり解説した本は今までなかったのではないだろうか. 骨折の手術は正確かつ骨癒合を得るために十分な固定力で,低侵襲に短時間で行われることが理想である.このために整形外科医は術前に入念な計画を行う.すべての手術は術前計画から始まっているのである.この術前計画が正しくできなければ,手術はうまくいかない.反対に術前計画が適切であれば,手術が成功する確率は高くなる.そして術後に実際に行なわれた手術と術前計画を比較し,うまくいかなかったところがあればその理由を考え次の手術にいかす.この計画,実践,反省を繰り返しながら外科医は多くの知識を身につけ,手術の腕を上げていく.ここでいう術前計画は作図をすることだけではない.患者の受傷前の状態に加え全身および軟部組織状態を把握し,画像を正確に理解し,術後のリハビリテーションから社会復帰するまでの治療経過全体を計画するのである.手術時間は限られているが,術前計画は比較的時間に余裕があり,経験豊富な先輩医師と議論し,こ推薦のことば2020年5月自治医科大学救急医学講座准教授松村福広

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