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7どと言わず,満を持してメスを持ちたいものです(なかなか難しいですが). そのためには「準備」が要ります. まずは成書を読んで保存加療も含めた知識を手に入れ,解剖を学ぶことが前提です.そして,骨折の手術に関する知識のためにはAO法を学ぶのがお薦めです.教科書だけでなく,AO Courseにも行きましょう.外傷整形を専門職にしていくのでなければBasic Courseだけでもいいかと思います.ここに基本エッセンスのほとんどが詰まっていますし,一貫した軸(AO法)を持って外傷整形外科の手術治療に当たることは重要です.先輩の経験からの教えだけを頼りに手術を行うのは科学的ではありません.AO法でなければ骨折手術ができないわけではないですが,「AO法を知らずして骨折手術を語るべからず」です. また,週末の予定をあけておいて日進月歩の外傷のいろいろな学会や勉強会に参加して知識を最新にupdateしておくべきです.少し前の真実が現在の誤りであることもあり,数年参加しなければ過去の人になってしまいます. こうした日々の積み重ねのうえで,実際の手術の準備,「術前計画」を行います.術前計画とは,どのインプラントを入れるかだけを示すものではなく,初療で救急対応を開始してから術後リハビリまでの包括的なものを言います. 当院では術前計画として1.「外傷整形術前計画テンプレート」の入力と2.「術前作図」の描画を必須としています.(詳細は第1章「術前計画の実際」を参照).この2つを完成すれば,ひとまず準備ができたと言えるでしょう. あとは,手術開始までに頭の中で最低5回はすべての行程をイメージしてください.メスを入れてから閉創までではなく,入室から退室までの行程です.ここまですれば術中の迷いは激減します.計画した通りに進めるだけです.慣れてくれば,術中に起こり得るトラブルについても解決策を準備しますが,それはまたひとつ次の段階です. 本書は,これから骨折手術の経験を積んでいこうとする若手整形外科医の助けになればと思い,7,000例の術前計画から抜粋してまとめました. いろいろやらせてくれるかどうかで先輩や施設を評価する前に,いろいろ準備してくる後輩になりましょう. 多くの一流アスリートも言っています. 「準備がすべて」と.2020年5月矢倉拓磨

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