編集にあたって2公益財団法人日本スポーツ医学財団理事長松本秀男 関節鏡は,かつては関節内の病変を確認する「診断するための道具」であった.しかし,近年の医学の進歩,光学系,電気系を中心とするテクノロジーの進歩に伴って,関節鏡は「手術のために必要不可避な手段」になり,現在では関節外科領域の手術は,その多くが関節鏡視下に行われている.しかも,膝関節を中心に発展してきた鏡視下手術は,肩関節,肘関節,股関節,足関節など,さまざまな関節に対しても応用され,その後も急激に進歩して,スポーツ整形外科の領域では,関節鏡視下手術なしには考えられないほどになっている. したがって,整形外科医を志すすべての者にとって,関節鏡視下手術を学ぶことは必須であり,その技術なしに整形外科医は名乗れない.関節鏡視下手術はあくまでも技術(テクニック)が重要であり,成書をいくら読んでもできるようにはならない.実際の現場で指導医に直接指導を仰ぐことが最低限必要である.しかし,指導を仰ぐ前に,自らも十分な準備をしておく必要がある.どのような肢位で手術を行うのか,どのような器械を使うのか,どのような角度で見ればいいのか,同じようにやってもどうして指導医がやるとうまくいくのかなど,これから関節鏡視下手術を志そうという初心者にとっては,すべてのことが未知の世界である. 関節鏡視下手術の手技書は多く出版されており,ある程度経験を積んだ術者には有益な書も多い.しかし,これから関節鏡を始めようとする者(超入門者)にとっては先に述べた基本的な疑問に答えてくれる入門書は少ない.今回,このような超入門者が研鑽を積み,将来関節鏡視下手術のエキスパートになるための第一歩を学ぶ書として,「超入門 関節鏡視下手術」を企画した.膝関節,肩関節,肘関節,股関節,足関節について,それぞれの分野の専門家に依頼し,自分が初心者であった頃の気持ちを思い出して執筆していただいた.また実際の関節鏡視手技,鏡視下所見などについては写真をふんだんに使い,視覚的に理解しやすいように工夫した. 本書が今後,関節鏡視下手術を志す整形外科医(超入門者)の最初の一冊になり,エキスパートになった後に懐かしく思い出していただける存在になることを祈念する.第1章 膝関節鏡視下手術
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