4編集にあたって産業医科大学若松病院整形外科診療教授内田宗志 本書は,「若手医師のための 超入門 関節鏡視下手術」というタイトルで膝関節,肩関節,足関節に股関節という新しい分野も加えて,構成されている.わが国で産声をあげた関節鏡は,太平洋を渡り,アメリカ・カナダで,手術に応用するまで発展した.膝関節および肩関節に対する関節鏡視下手術が盛んに行われるようになった.さらに現在では,肘関節,股関節,手関節,足関節にまで,手術が応用されている. 股関節鏡においても,直視手術中心の時代から鏡視下手術の時代への,パラダイムシフトという大きなうねりの中にある.次に挙げるようなことが,関節鏡によってもたらされた恩恵といえよう. 第一に,低侵襲で良好な視野の下で,関節内部から病態を観察することができることにより,病態診断能力が格段に向上した.そして画像診断の進歩により,関節鏡と画像診断を照らし合わせることで,手術が必要な症例を見極められることになったことが挙げられる.第二に,手術器具やスーチャーアンカーなどハード面の進歩や,第三に関節鏡視下手術を行う整形外科医の個々の技術的な進歩により,解剖学的かつ力学的に,損傷された組織をより頑丈に修復もしくは再建することが可能になったことである. 「第4章 股関節鏡視下手術」では,股関節鏡における現状について,股関節鏡視下手術を行う新進気鋭の整形外科医に執筆をお願いした. 「セットアップと体位」について,大阪府済生会野江病院の柴田弘太郎ロバーツ先生に,「股関節鏡のポータル」については自治医科大学の宮本理先生に,「股関節鏡で見えるもの」については神戸大学の橋本慎吾先生と信州大学の下平浩揮先生に,「股関節唇修復術と再建術」については錦野クリニックの錦野匠一先生に,股関節唇損傷の最大の原因といわれている「FAI矯正手術」については松山赤十字病院の大島誠吾先生に,「境界型寛骨臼形成不全に対する関節包縫縮術」については産業医科大学若松病院の宇都宮啓先生に,「鏡視下中殿筋修復術,坐骨神経剥離術など」については岡山大学の山田和希先生に執筆していただいた. 本書により,股関節痛で困っている患者をこれからたくさん診察される若手医師たちが,最小侵襲でなおかつ詳細な鏡視診断を行い,解剖学的に損傷された組織を修復できるかを理解し,今後の日常診療に大いに役立てていただけるものと確信している.第4章 股関節鏡視下手術
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