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5早稲田大学スポーツ科学学術院教授熊井 司 足関節鏡は,膝関節鏡と同様に当初日本において臨床応用されている.1939年に高木憲次先生が膝関節以外の6関節(股関節4例,肩関節1例,足関節1例)に応用し,1972年には渡辺正毅先生が28例の足関節鏡の鏡視結果を報告されている. しかし,その後の足関節鏡の普及は北米で目覚ましく,1990年代のわが国の足関節鏡手術の普及はかなり遅れていた感がある.その後,徐々に新しい技術が紹介されるようになり,比較的若い世代の中で,足関節鏡技術の習得を切望する整形外科医が確実に増えてきている.特に,低侵襲手術が要求されるスポーツ整形外科の分野では,足関節鏡を含めた足の外科の需要は非常に高く,人気がある.一方で,わが国ではいまだ足関節鏡視下手術における技術的格差が医療施設によりかなり偏っており,足関節鏡のまったく経験のない整形外科医も少なくないのも事実である. この10年,足関節鏡視下手術を見学するため私の下を訪れる整形外科医の数は年々増加の一途をたどっている.また年に数回企画している国内外でのキャダバーを用いた足関節鏡手術セミナーへの参加希望者も増加傾向にある.近年の日本足の外科学会の急激な会員数増加とともに,足関節鏡に魅了される整形外科医はますます増加しているように思う. 本書は,「若手医師のための」関節鏡視下手術の超入門書である.関節鏡視下手術とあるが,その前に足関節鏡のセッティング,機器,ポータル作製,そしてそこで見えているものが何なのか,といった基本がわからなければ話にならない.関節鏡視下手術の議論をする前に,足関節鏡の「いろは(若手にはABCのほうがわかってもらえるだろうか)」のような共通認識,共通言語を共有することが必須であると思う. 関節鏡手術で重要なのは,見えているもの(形態)が実際に解剖学的のどの位置に存在し,正常と比べて多いのか少ないのか,硬いのか柔らかいのか,安定しているのか不安定なのか,など機能面に至る情報をいかに的確に引き出すことができるかにある.そのためには,関節鏡視下手術のみでなくオープンでの手術から得た豊富な知識も不可欠である. 本書は入門書であるため,関節鏡視下手術については最も頻度が多く,かつある程度手技が確立されている4つの術式のみを選んだ.そして,十数年前まではある意味「若手医師だった」はずの,しかし今は私と同じような認識をもつに至っているエキスパートの先生方に執筆していただいた. 本書をきっかけに,足関節鏡視下手術における共通言語を話すことができる整形外科医がますます多くなり,今後の発展をもたらしてくれるものと大いに期待している.第5章 足関節鏡視下手術

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