402500020
3/14

 海外では婦人科疾患のロボット手術は、以前から数多く実施されており、子宮体癌に関しては約8割がロボット手術で施行されています。わが国では、最近ようやく実施施設が増加してきましたが、まだ導入段階の施設も多く、全国に均てん化・標準化されているわけではありません。外科系の他科の動向や世界の情勢をみても開腹手術・腹腔鏡手術からロボット手術に移行するのは間違いなく、この流れに乗り遅れることは、つまり患者の治療法の選択をなくすことになります。 本書では、主にロボット手術の子宮体癌に対する準広汎子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清について、動画を中心にわかりやすく解説いたします。ロボット手術のポイントは2つあります。 第1の点は補助アームの存在だと筆者は考えます。このアームの存在は開腹手術や腹腔鏡手術にはなく、従来の手法とは異なります。本書では術者の右手に2本、左手に1本アームを置いています。右手の2本のアームは術者のフットスイッチの操作により、こまめに使い分けながら最適な術野を展開していくことが可能になります。最重要ポイントは常に術野のそばに補助アームを置いておくことです。この操作を行うためには、可能な限り近景にすることであり、この点も従来の腹腔鏡手術とは異なります。この術野を可能にしているのが、3Dの立体的な術野であり、従来の開腹手術・腹腔鏡手術と比べ、全く違うレベルで安心・安全に手術が遂行できます。 もう一つの点はデュアルコンソールを用いた指導法です。手術を行うまで、そして 手術導入時の手術研修としては、①Online modules、②ロボットの手術見学、③Dry lab training、④Wet lab training、⑤Dual-assist console trainingなどがあります。デュアルコンソールを用いた手術教育は、今までの開腹手術・腹腔鏡手術にはない指導法で、習熟した医師が同じ術野を展開でき、執刀医はポインターなどで実際の切開ラインや牽引法の指導を受けながら手術をすることが可能です。術野の展開や止血に難渋する場合にはSwap all機能で熟練した医師が実際に操作できるため、安全に手術が遂行でき、腹腔鏡下手術よりも明らかにラーニングカーブは早くなります。 本書に付属した動画は、三重大学医学部附属病院内で撮影したものです。撮影にあたって、ご協力いただいた三重大学医学部附属病院臨床麻酔部の先生方ならびに中央手術部のスタッフに厚く御礼を申し上げます。 当院では、全国に先駆けて早くからデュアルコンソールを用い、若手医師(専門医取得後)にもロボット手術を導入しています。本書ではその手術手技を詳しく解説します。  2020年3月三重大学医学部産科婦人科学教室准教授 近藤英司序 文1

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る