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12どうやって克服しよう硬い核 水晶体乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration;PEA)では,硬い核はそれだけで難症例に入るケースが散見される.以前は水晶体囊外摘出術(extracalsular cataract extraction; ECCE)で行うことが一般的であったが,PEA機械と周辺機器の急速な進歩に伴い,また日帰り手術の普及で,かなり硬度な核まで,処理することが可能となり,また惹起乱視の点からもECCEの割合は圧倒的に減少している1).しかし,基本手技としては,完成された術式であり切開,前囊切開,水流核皮質分離,縫合など忘れてはならない点も数多く含まれている.今回は中級レベル術者を対象としているので,基本に立ち返って,PEAを使ってできる硬い核の白内障手術のコツと,方法について,またPEAでは不可能な症例ではECCEを基本選択とし,粘弾性物質(ophthalmic viscosurgical device;OVD)やその他の必要なデバイスを紹介しながら,それらをうまく活用した,眼球に優しい(翌日からよく見える?)手術手技を紹介する. まずは,硬い核を診断した段階での手術完了までのフローチャートを図1に示す.硬い核を診察した段階,図のような展開を考えておくことが望ましい.まずどの程度の核硬度であるかの診断が必要で,それを踏まえた上で,自分の経験値を加味し,現在ある機械で対応可能かを判断して進めていく必要がある. 今回は中級者を対象として考えると,図2程度の核処理は,基本に沿えば問題なく処理できるが,図3程度となると,ECCEへのコンバートも考慮した術式の選択,また機材のセットアップ,さらに最も重要である患者への事前説明を十分行っておく必要がある.安易な説明では,手術時間の延長だけでも不安を抱かせてしまい,場合によっては術後のトラブルに至るケースになることもある.硬い核の実際の手術手技1)角膜内皮保護 WEB1-1-A 硬い核の場合は,PEA時のエネルギー量も増えるので,角膜内皮細胞に対する影響を最小限にするために分散型と凝集型を組み合わせたsoft shell technique2)(図4A, B),もしくは分散型とViscoadaptive型を組み合わせたultimate soft shell technique3)(図5)は有用として報告されており,角膜内皮側をコーティングした分散型OVDが内皮細胞を保護する役割を担っている.2)核の処理 WEB1-1-B 切開創は強角膜4面切開を基本とする.これは硬い核・成熟白内障の克服11難症例への対処章石井 清 Kiyoshi Ishiiさいたま赤十字病院〒330-8553 埼玉県さいたま市中央区新都心1-5

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