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 1970年代に開発されたclosed eyeの硝子体手術は,機械や器具の劇的な進歩によってより短時間で低侵襲に施行することができるようになり,術後の成績も改善してきた.それに伴い近年は,適応疾患が拡大し執刀に対する敷居が低くなり,多くの術者が施行する術式となってきている.事実,国内における硝子体手術の件数は増加している.そのような状況の中,一般的に教科書といわれるものは,最も一般的な“正攻法”のみが提示されていることが多いが,実際の臨床の現場では,各術者ごとの細やかな工夫や差異(いわゆる“Tips”と言われるもの)がちりばめられており,それらによってよりスムーズな手術であったり,良好な術後成績が実現されているといった側面も一方では存在している.どれか一つの方法が“絶対的に真”ということはなく,術者の技量や癖,患者や治療を行う手術室の状況によって影響を受けることもあり,一概にどれが正解であるとは言えない. また,それら各術者・各研修施設でのTipsや工夫の相違であったり,それらのバリエーションを身に付けようとすると,非常に多くの施設に実際に足を運び,ある一定の期間,実際に手術を見学させてもらう必要があり,たとえそうしたとしても,術者が術中にどのように考えているのかといった細かい点は吸収することができない.さらに,術中に術者は,次に起こりうる合併症やその他のリスクを避けるべく,さまざまな判断をしながら手術に臨んでいるが,それらのリアルタイムな判断は見学に行ったとしても聞き出すことは非常に難しい. 本書では,最前線で活躍する硝子体手術のエキスパート12名にさまざまなTipsを余すことなく紹介していただいた.本書を読めば,術式のバリエーションのみならず術中の思考回路からどのように術式選択を行うかなどに関する生の声を吸収していただけるはずである.あたかも,12の異なった施設へ手術見学に行ったかのような知識や情報を1冊に凝縮した. 近年,DVDやWEBサイトで手術動画が見られる手術書が増えているが,どれも単なる手順解説の域を出ない.本書に付属する動画には,6人の術者にリアルな症例を持ってきていただき,異なった術式を選択している複数の執筆陣が実際の手術を見ながら活発な議論を交わし,それらを「手術討論」としてまとめた6本の動画(320分)を付けた. 本書が初級から中級の術者の役に立つことを確信していると共に,切に願っている. 2019年8月米田一仁/大澤俊介編集にあたって編集にあたって2

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