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10 眼科グラフィック2019年別冊 はじめに 網膜血管疾患ではしばしば黄斑浮腫を伴うが,黄斑浮腫の検眼鏡での評価は熟練を要し,漿液性網膜剝離の評価に至っては不可能であるといってよいであろう.さらに,検眼鏡では定量的な評価はできないので,状態が改善しているのか,悪化しているのかの判断は主観的になってしまいがちである.しかし,OCTを用いることにより,容易に定量的評価が可能となった.今後,糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対しては抗VEGF薬が治療の中心となるのは間違いない.その際にもOCTによる評価は欠かすことができない.網膜静脈分枝閉塞症・ 網膜中心静脈閉塞症 網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)では毛細血管,静脈の血管内圧が上昇することにより組織内に血漿成分が貯留し,黄斑浮腫を生じる.黄斑浮腫は網膜の膨化とcystoid spaceからなる.BRVOに伴うcystoid spaceは網膜のあらゆる層に形成されるが,中心窩に大きなcystoid spaceを認め,中心窩外には内顆粒層・外網状層を中心に比較的小型のcystoid spaceを伴っていることが多い.急性期のBRVOでは中心窩下の大きなcystoid spaceは隔壁を伴っていることが多い.この隔壁は中心窩の形態形成にかかわっているMüller cell coneであると推測されている.しかし,慢性期になると隔壁は減少し,中心窩には大きな楕円体のcystoid spaceが認められるようになる.さらに,cystoid spaceが遷延すると網膜の細胞自体が減少し,cystoid spaceは長方形に近い形になる.このような状態はcystoid macular degenerationと呼ばれる状態である.視力は0.1以下に低下し,治療の対象にはならないことが多い(図1). 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)では,急性期には静脈は拡張蛇行し,刷毛状出血を生じる.切迫型CRVOでは黄斑浮腫は伴わないことが多いが,非常に高度な黄斑浮腫を伴うことも多い.また,虚血型CRVOでは,網膜内層は高反射を示し,その結果,網膜外層での反射が減弱していることが多い(図2). OCTで描出される視細胞内節外節接合部ライン(IS/OS)や外境界膜(ELM)が視細胞外層の健全さの指標として有用である.視力は中心窩の視細胞外層の状態に依存している.中心窩下に大きなcystoid spaceが存在していても,cystoid spaceの下のIS/OSやELMが確認できれば,視力は良好であることも多い(図3).一方,IS/OS網膜血管病変11OCT ①疾患別 撮影・読影ポイント章辻川明孝 AkitakaTsujikawa京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学眼科学〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54

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