10 眼科グラフィック2020年別冊はじめに 緑内障は「視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより,視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」とされている1).このため,眼圧測定は緑内障診療において,重要であることは言を俟たない.一方で実際の診療において,再現性と精度が高い眼圧測定を行うために,留意すべき点も多い.本稿では日常診療に使用される眼圧測定装置として一般的な,Goldma-nn圧平眼圧計,ノンコンタクト式圧平型眼圧計,反跳型眼圧計について,眼圧測定の基本と検査のコツを中心に述べる.眼圧についての基礎知識 統計的には正常眼圧の上限は21mmHgとされているが,多治見スタディの結果から,わが国における正常眼圧の上限は19.9~20.0mmHgと考えられる.眼圧の絶対値と緑内障の重症度についてリニアな関係は認めないが,高い眼圧は緑内障進行に確実に関与することから,一般診療においても,眼圧検査をスクリーニングとして行うことが望ましい.眼圧測定はGoldmann圧平眼圧計で行うことが理想的であるが,多忙な臨床現場でしばしば困難であることから,パラメディカルスタッフでも眼圧測定が可能である,ノンコンタクト式圧平型眼圧計を用いた眼圧測定で代替することが現実的である.その場合も,眼圧測定値が15mmHgを超える場合は,Goldmann圧平眼圧計を用いた眼圧測定を行うことが望ましい. 眼圧は測定したときによって異なり,その原因として眼圧の日内変動や季節性の変動が挙げられる.このため,1回の測定値を治療前眼圧として採用することは,非常に眼圧が高く,高度な視野障害を伴う症例など,早急に眼圧下降が求められる場合を除いて避けるべきである.通常3回程度の治療前の眼圧測定を,午前中と夕方など測定時間帯を変えて行い,平均眼圧をベースライン眼圧として採用し,目標眼圧を定めることが望ましい.一方で,緑内障点眼薬の眼圧下降効果の評価にあたっては,日内変動の影響を受けないよう,同一時間帯で実施することがよいと考えられる.日内変動の影響を後から検証できるよう,測定した時間の記載を行うことも重要である.眼圧計による眼圧の差 眼球内の真の眼圧に完全に一致した眼圧測定装眼圧検査11緑内障の検査章石川慎一郎 ShinichiroIshikawa佐賀大学医学部眼科学講座〒849-8501 佐賀市鍋島5-1-1
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