眼科グラフィック2020年別冊 11緑内障の検査 1 眼圧検査1章置は現時点で存在しないが,Goldmann圧平眼圧計が,使用可能な眼圧測定装置で最も信頼性が高いとされている1).眼圧測定法の差異によって,眼圧測定値が異なることから,測定装置間で絶対値の比較はできない.また,今回取り扱う眼圧測定法で得られた眼圧は,相関する傾向があるとされている2,3)が,装置間で眼圧の換算式は存在しないため,眼圧測定値を直接比較することもできない.1)ノンコンタクト眼圧計 眼圧正常域ではGoldmann圧平眼圧計の眼圧測定値と同等またはやや低値を示す4)とされている.角膜弾性の影響をGoldmann圧平眼圧計より強く受けるため,角膜が厚くなるほど高い測定値を示す5).2)反跳式眼圧計 Goldmann 圧平眼圧計の眼圧測定値と相関するが,得られる眼圧値の傾向は報告により異なっており,一定の見解が得られていない3).眼圧測定と角膜の関連 すべての眼圧測定装置で,角膜が厚いと眼圧値が高く測定され,逆に角膜が薄いと眼圧値が低く測定されることから,眼圧測定値の補正6)が必要である〔補正眼圧=眼圧測定値-0.045×(角膜厚-554)〕.最近のノンコンタクト眼圧計装置は,角膜厚を測定する機能を有しているものも多いことから,スクリーニングの眼圧検査の際に,角膜厚を測定することが望ましい.屈折矯正手術後は角膜が薄くなることに加えて,角膜の形状も変化し,術式によって程度が異なることから,眼圧評価方法について確立されておらず,目標眼圧の設定は困難であるため,注意深い観察が必要である.眼圧測定前の留意事項 いずれの眼圧測定も力みなどにより,測定値に影響が出るため,眼圧測定前に測定姿勢を整えておくことが重要である.個別の眼圧測定装置特有の注意点は後述するが,ここでは眼圧測定全般について述べる.1)姿勢 被検者に力みがあると正確な眼圧測定ができないため,測定前にリラックスした状態にすることが重要である.顎を顎台に乗せ,額が額当てに接触した状態で,椅子の高さを調整し,やや背中が曲がる状態に調整を行う.このとき,手を膝の上に置き,お辞儀をするように額を前に出すように指示をすると,測定中に額が額止から外れることを抑制できるとともに,被検者の手指が器械に触れることなく検査を行うことができる.2)精神状態 緑内障治療は眼圧を下げることが唯一の治療法であることから,眼圧について患者の関心が高く,眼圧が上昇しているのではないかと心配しながら,眼圧検査に臨むことが多い.こうした精神状態下で検査を行う際に,肩に力が入り眼窩内圧の上昇や眼瞼の圧迫が生じ,正常な眼圧測定ができないことが起こる.このため,片眼の測定が終了し遼眼の測定に移る際に,被検者に力みがないか確認を行い,「肩の力を抜いてください」などの声かけを行うことが重要である.筆者は通常,右眼→左眼の順番に測定を行うが,多くの被検者で力みを認めることから,右眼→声かけ→左眼→右眼として,2回目の右眼の眼圧測定値を採用することが多い.
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