12第1章 いざ出版を目指して 私が医学書を書こうと思ったきっかけ 「先生、これをまとめれば本になるんじゃないですか?」 これは、当時いっしょに働いていた初期研修医の先生からかけられた言葉です。 研修医教育に興味があった私は、これまで院内で複数の勉強会を企画して、教育法、指導法を自分なりに研究し、試行錯誤してきました。長く続いたものもあれば、1回限りで頓挫してしまったものもありました。その中のひとつに、「ERのピットフォール(落とし穴)を研修医にメールで全発信」というのがありました。 ERはピットフォールの宝庫です。多少の差はあれ、放っておけばみんな似たような落とし穴に落ちてしまうのがERの研修というもの。ピットフォールの場所を教えてあげるのは上級医の役目です。毎年、毎年、新しく回ってくる研修医たちに、ほぼ同じようにピットフォールや失敗談を話しているうちに、「毎回同じ話をしているなあ。でも大事なことだから教えておかないといけない。ところでこの話は、研修医のA先生とB先生には話したけど、C先生には話したかな?」と、誰に何を指導したかがわからなくなってしまうこともありました。 そこで、指導したワンポイントをノートに箇条書きでまとめておき、ある程度貯まったら研修医にメールで全発信することにしました。「そうすればピットフォールを全員で共有できるに違いない」と考えたのです。メールのタイトルを「救急外来で気がついたこと」と題し、5から10項目ほどのワンポイントが集まったらメールで全発信、ということを試しに始めてみました。やってみると指導していたピットフォールは意外に多く、平均して週に1〜2回、多いときはほぼ毎日のペースでメールをすることにな
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