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2 科学研究は、日本国内のすべての活動の中で最も大きな意味を持ちます。当然のことながら、自然科学、応用科学の分野でレベルの高い研究をすることが、実社会での経済活動を保証します。科学大国は経済大国を保証します。私の属する医学の分野でいえば、がんと免疫の分野の基礎研究の成果から、製薬メーカーとの共同の応用研究で画期的な抗がん剤が生み出され、国内外のがんで苦しむ患者さんに福音になるだけでなく、海外にその薬剤を導出できれば、医学は莫大な経済活動をけん引することになります。医学・理工領域のみならず自然科学に従事する科学者は、自分たちの科学研究の成果を英語論文にします。英語論文が、科学者の研究成果を示す舞台です。しかしながらわれわれ日本に住む研究者には、自分の研究を英語論文として書き上げて、それを世界に向けて発表していくうえで3つの高いハードルが課せられます。 その一つは、英語で文章を書くことです。英語を学生時代に10年以上も勉強してきた日本の科学者でさえも、英語で文章を書くことは多少の苦痛を伴います。しかし、最近ではかなり優秀な自動翻訳機がありますので、英作文自体は日本の研究者にとってさほど大きな問題にはならないはずです。でも、大学入試での英作文の問題のように、日本語でストーリーを考えて、それを英語に訳すのではダメなのです。英語論文は英語で書かなくてはいけません。日本語でストーリーを考える脳状態で英文を書いてもそれは英語を母国語としている外国人に対して響きません。しかし、急に英語で考えて英作文はできません。どうすればいいのでしょうか? それは、英語の文化圏で英作文をおこない、それを英語の文化圏の方たちに発信するエッセンス・本質が何なのかを知ることにつきます。 もう一つのより高いハードルは、英語論文を通すための“戦略と戦術”を十分に考えずに論文を一流学術誌に投稿し、編集者・査読者とのやり取りに敗れ、論文に日の目を見せることができないことです。「私の研究はとてもいい研究だと思うのに、なぜアクセプトされないのだろう」とあなたはいつも思ってい緒言

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