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 医師向けの本がない。 仕事好きの女性に関する本は多いが、それでも「リーダーシップ」というテーマについては、検索しても少ない。さらに、医師向けとなると皆無である。 自分が医師という仕事を続けていくうえで、考え方や姿勢、態度の基軸となる理論的構築がなされないまま、17年が過ぎ去ろうとしていた。 本書の題名、「女性医師の意欲とキャリアとリーダーシップ」 今まで語られてこなかったのか? 17年間、私は悩んだ。そして迷走し続けてきた。ロールモデルが身近にいなかった。手の届かない遠くに、星のように輝いて見える「なりたい像」があるのかもしれない。それを追い求めて、もがき、答えが欲しくて、あちらこちらへ彷徨い、今もまだ旅の途中である。 最も私に影響を与えたのは、2014年から研究員として留学したハワイ大学医学部での、Office of Medical Educationのフェローシップであった。「医学教育学」の恩師、Dr. Richard Kasuyaが開発した医師のためのリーダーシップ教育が、私の価値観を劇的に変えた。リーダーシップについて学びを深めていくことで、知的欲求が満たされていく快感を得た。さらに、Women Leadershipという分野があることを知った。私が欲しかった答えが、そこにあると確信した。 医療とジェンダー・バイアスに関する研究は少ないものの、ある程度のエビデンスが存在することが分かった。「この知識は共有すべきだ」と思ってはいたが、ネガティブ心理全開で、私は迷っていた。それは、「発言することそのものが、女性のキャリアにとってリスクになる」ことが証明されはじめに

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