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1「医療4.0」とは 2020年代,第4次産業革命に関連したテクノロジーを活用することで,今までの医療で解決できなかった医療現場の課題に新たなアプローチが提示され,新しい医療の形が考えられる. 「医療4.0」というのは第4次産業革命時代の医療という意味であり,日本の医療の歴史を振り返ったときに4番目の大きな変化でもあることに由来する.1960年代に国民皆保険制度が実現して今の医療提供体制の礎ができた「医療1.0」,高齢化が懸念され始め老人保健法やゴールドプランの策定など今につながる介護施策が進んだ1980年代の「医療2.0」,2000年代のインターネットの広がりとともに電子カルテをはじめとした医療のICT化が進んだ昨今の「医療3.0」と20年ごとに分類し,2020年代からの第4次産業革命に関連したテクノロジーを活用した新しい医療の形を「医療4.0」と提唱した.(加藤浩晃:医療4.0: 第4次産業革命時代の医療〜未来を描く30人の医師による2030年への展望〜.日経BP社,東京,2018)2「医療4.0」の特徴 2030年に向けた医療の特徴として,①多角化,②個別化,③主体化の3つが考えられる.⒉①多角化 医療はこれからさらに医療機関の外に広がっていく.現在の医療は,患者が病気になり病院に来た時点からスタートする.医師をはじめとする医療者は基本的には病院にいて,保険診療も基本的には病院での医療行為に算定される.医療費の抑制に向けては予防医療や健康増進が求められているように,医療は病院から個人や家庭など多角化の方向に進んでいく必要があると考えている.これは在宅診療の推進や家でも診療が受けられるオンライン診療だけでなく,エビデンスを持った医療が様々な形で自宅や日常の中に入ってくることを指す. 国土交通省が進めているスマートウェルネス住宅などはわかりやすい例であるし,「医療×IoT機器」「医療×日常生活」「医療×家」「医療×家電」のような様々な形で日常の中で医療が提供されるようになるのではないだろうか.⒉②個別化 個々人に応じたオーダーメイドな医療が進むことが考えられている.現在,血圧,血糖値,脳波など多くのデータが非侵襲や低侵襲でとれるようになっている.センシング技術の向上に合わせて,データの解析技術も向上しているため,個人が通常どのような状態か,データでの可視化も進んでいる.例えば,「FreeStyleリブレ」では自分の現在の血糖値やその変化がほぼリアルタイムで分かる.このような個々人を可視化したデータをもとに,個々人に合わせた医療がさらに進んでいく.今後,ウェアラブルデバイスをはじめとするIoT機器により,個人のデータを簡単に24時間365日,リアルタイムに収集することができるようになる.そのデータが個人のデータとして集積されビッグデータとなり,ストレスのかかった状態,病気の前触れの状態など,通常状態の自分と比較することで見つけることが可能となる.⒉③主体化 医療の主体が患者自身に代わっていくという考えである.PHRなどにより患者自身が健康医療データを持つことによって,自己のデータを見る機会が増えること,医師と患者の情報の非対称性が解消される方向に働くことなどから,患者自身が医療に主体的にかかわるようになる.生活習慣病を中心にシフトしてきた現在では,患者自身が薬の内服や適切な生活をし続けないと医療の質の向上につながらない.自分の健康を意識することが行動変容につながり,医療の質の向上につながる.さらに,血糖値など行動に伴った変化がデータとして示されるため,健康に向かう行動を続ける動機ともなる.新型コロナウイルスにより「医療4.0」時代へ2021年のデジタルヘルス予測1章11デジタルヘルストレンド2021

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