<ポイント> オンライン診療は2020年に新型コロナウイルスの感染予防のために,過去5年の変化を大きく超える変化をきたした.2015年8月にオンライン診療(当時,遠隔診療)が解禁されたが,2018年に一転して利用が制限されてきた中で,2020年は時限措置ではあるが,どのような疾患でも初診ならびに再診でオンライン診療が可能となっている.さらに2021年6月にオンライン診療の恒久化に向けたとりまとめ,そして2021年秋ごろにオンライン診療の適切な実施に関する指針の改定が予定されている.オンライン診療は2021年に,「単なるテレビ電話診療」から,領域の拡大がみられる1年となると考えている.1オンライン診療の定義 厚生労働省がまとめた「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和元年7月一部改訂)によると,オンライン診療の定義は「遠隔医療のうち,医師−患者間において,情報通信機器を通して,患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を,リアルタイムにより行う行為」とされている.すなわち,「患者が医療機関に行くことなく,スマホやパソコンなどを使って,テレビ電話でリアルタイムに診察や薬の処方を受けることができる仕組み」のことである. オンライン診療は,医療機関で医師が行う医療行為である.一方,診断などを行わないあくまでも健康相談をオンラインで行う「遠隔健康医療相談」は非医療行為であり,企業が主体で医師をはじめとする医療者を雇用しながら提供ができる.2オンライン診療の目的 オンライン診療の目的は,①日常生活の情報を得る,②医療へのアクセスの改善,③能動的な患者自身の治療参画の3つである. 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で,①患者の日常生活の情報も得ることにより,医療の質のさらなる向上に結び付けていく②医療を必要とする患者に対して,医療に対するアクセシビリティ(アクセスの容易性)を確保し,よりよい医療を得られる機会を増やす③患者が治療に能動的に参画することにより,治療の効果を最大化すると示されている.3ハイブリッド診療のススメ オンライン診療は対面での診療がオンラインに変わったものであるが,その目的は対面診療と同義ではない.オンライン診療と対面診療を医療の質の点で比較して,患者に直接触ることや,アルコール臭くても臭いを感じることができないことなどから「オンライン診療は質の低い診療なので活用をしない」と考えるのは短慮である. オンライン診療は対面診療とは別の目的を持っており補完となる.オンラインと対面の2つを診療の両輪とすることで,患者に提供できる医療を向上させることができるのではないだろうか. 対面診療orオンライン診療という考えではなく,それらを適切に使い分ける「ハイブリッド診療」を行うべきではないだろうか.現状の整理●❶オンライン診療の領域拡大12
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