4オンライン診療の今までの経緯⒉①オンライン診療(遠隔診療)創成期 オンライン診療(当時は遠隔診療)の経緯としては,直接の対面なしに診察を行うことは医師法違反でないかという疑義がされていた中,1997年にオンラインで診察を行っても医師法違反にならないという解釈がされた.ただ,当時はオンラインで診療ができる疾患には制限がされていた. 現在のオンライン診療の流れにつながるものとしては,2015年8月に遠隔診療の解禁とされた「疾患の制限なくどのような疾患においてもオンライン診療を行うことが可能」という事務連絡によってである.オンライン診療がこれから進むことを予感させるもので,多くの企業がオンライン診療システムの領域に参入をした.⒉②オンライン診療ブームの一時終焉 2015年8月に解禁されたとするオンライン診療は「電話等再診」という診療報酬を活用して行われていたため疾患の制限がなかったが,オンライン診療に特化された診療報酬ではなかった.2018年3月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が策定されてオンライン診療に関係する保険診療と自由診療を合わせたルールが決められ,さらに2018年4月の診療報酬改定において「オンライン診療料」の新設とそれまでの「電話等再診」のオンライン診療での使用の禁止が決められた.「オンライン診療料」では,ある条件をみたした慢性疾患のみ算定できる点数であり,生活習慣病や難病などでない疾患の多く,例えば眼科,耳鼻科,皮膚科,精神科などの疾患ではオンライン診療が新規に行えなくなってしまった.さらに2020年4月の診療報酬改定においても,「オンライン診療料」の算定条件の緩和がされたが,依然,生活習慣病や難病などを除く疾患ではオンライン診療が行えない状況であった.⒉③新型コロナウイルスによる特例措置 2020年4月,新型コロナウイルスの感染予防のために,時限措置としてオンライン診療の規制緩和がされた.これは以前に活用されていたどのような疾患でもオンライン診療を再診の場合に行ってよい「電話等再診」のオンライン診療での利用と,さらに新しく「オンライン診療での初診料」が新設された.これにより,新型コロナ禍においては,保険診療において,初診でも再診でもどのような疾患においてもオンライン診療を行うことができるというのが現在である.これからの動きとしては,2021年6月にオンライン診療の恒久化に向けたとりまとめ,そして2021年秋ごろにオンライン診療の適切な実施に関する指針の改定が予定されている. ここ5年,いやここ20年以上で最大の変化が起こり,急激にオンライン診療が進んでいる.5オンライン診療の実際 まず,普段のかかりつけ医にオンライン診療を行っているか確認,もしくはネットなどでオンライン診療を行っている医療機関を見つけてから連絡をする. 診察の予約時間になると医療機関から連絡があり,テレビ電話を通して診察を受けていく.診察は対面での診察と同じである.しかし,オンライン診療はテレビ電話のため,オンラインでは十分な情報が得られないことを,医師と患者の双方が理解するべきである.オンラインで診療が始まったとしても,症状次第で診察ができないと判断されることがあり,そのときは改めて医療機関への受診が必要になる. 診察が終わったら通常の受診と変わらず,健康保険によって医療費の支払いを行う.支払いは医療機関にもよるが,銀行振込やクレジットカード電子決済などで行うことができる. 薬が処方される場合は薬局に処方箋が送られ,患者に対して薬局からオンラインで薬の服薬指導が行われる.そしてその後,処方薬が自宅に送られてくる.スマホひとつあれば予約から診察・決済までできることがオンライン診療の特徴である.2021年のデジタルヘルス予測1章13デジタルヘルストレンド2021
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