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11Ⅰ章解説編1高高高高高高高高高高高高高高高高高高高高高高高高高高高外傷性脳損傷 外傷性脳損傷の特徴は病変が必ずしも1カ所ではないということです。損傷した部位は脳挫傷となり出血を少なからず伴います。イメージとしては豆腐がぶつかって崩れてしまったようなものです。脳挫傷が多発すれば症状も多彩になります。 しかし明らかな脳挫傷や血腫がないのにもかかわらず意識障害が長時間続き、後遺症として高次脳機能障害を呈することがしばしばあります。これはびまん性軸索損傷という病態によることが知られています。交通事故などの高エネルギー外傷では、頭部は頚部を支点として加速回転し、そのとき生ずる剪断ひずみによって脳損傷が起きます(図)6)。つまり回転性の加速衝撃によって脳内にズレが生じ、大脳白質の神経線維が多発性に断裂するのです。衝撃の強さにより損傷は脳梁や脳幹にも及びます7)。脳内の連絡線維が至る所で損傷されるわけですから高次脳機能障害を起こしやすい病態と言えます。低酸素脳症 心筋梗塞、心停止、各種ショックや窒息など、種々の原因による脳全体の血流低下(停止)によって低酸素状態が続いたことによる脳損傷です。神経細胞は低酸素に弱い細胞で影響は脳全体に及びます。したがって高次脳機能障害を起こしやすい病態と言えます。 また脳には虚血(低酸素)に対して特別に弱い神経細胞が存在します。その代表的なものに海馬のCA1神経細胞があります。この細胞は5分間脳血流が停止すると、たとえ血流が再開されても2週間後には死滅します(プログラム細胞死)。低酸素脳症ではこのような海馬損傷を伴っている可能性があります。その場合、症状としては記憶障害を示します。23外力外力剪断力(破線)加速図 回転加速と剪断力(片山容一ほか.頭部外傷.脳神経外科学.改訂12版.京都,金芳堂,2016,1833.より転載)

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