3Ⅱ章課題マニュアル編 このたび高次脳機能障害者の社会復帰を支援するため、「高次脳機能障害者の社会復帰を支援する認知機能・職業能力・対人関係スキル訓練指導マニュアル」と題して、この本を作成いたしました。これまでこの本の先駆けとなる本を「認知機能回復のための訓練指導マニュアル」と題して出版していました。しかしその後の高次脳機能障害者に対する社会の認識と対応の変化、また治療機器の高度化などに応じて、新たにこの本を出版することが必要と判断することになりました。 高次脳機能障害については13年前に日本独自の診断基準が作られ、全国の都道府県でこの基準にのっとり多くの患者さんが認定されてきました。またこの間に対応マニュアル、地域生活支援マニュアルなどいくつかの分野で、高次脳機能障害者を治療、訓練、支援するための本が出版されてきました。ただこれまでは認知訓練が重視され、これについての出版が多くなされてきました。そこでこの本でも認知訓練についてはアップデートし、最近の進歩や治療法の開発についても記載いたしました。しかしそれ以外の問題点については、あまり深く追及されてきませんでした。 そこで今回は高次脳機能障害に関して就労支援もチャプターに入れ、また就労に必要な課題についても内容を加えました。さらに社会的スキルについても高次脳機能障害者の持つ職業や対人関係、さらに認知機能障害の特徴を理解したうえで、いかに対応するという章を設けて詳しく記載しました。 高次脳機能障害という言葉は今や全国的に受け入れられ、診断への対応はできつつあると思われます。しかし障害を持つ方には若い方々が多いので、認知訓練のみならず、就労支援についても詳しく評価方法、訓練方法、実際の訓練などを記載いたしました。就労に必要な課題は知的なもののみならず、社会的スキルとしての対人関係やこの基になる認知機能などについても重要と考え、詳しく記載いたしました。 この本はマニュアルとして訓練室の患者さんのそばに置いていただき、常に参考にしていただければと考えています。このため訓練課題もサーバーからネットを介してダウンロードしていただき、手軽に使っていただけるようにしましたので、ご利用いただければ幸いです。この本が高次脳機能障害を診療、評価、訓練しておられる診察室や訓練室で、手軽な参考マニュアルとして使い尽くされることが私たちの希望するところであります。今後、高次脳機能障害者の方々がいろいろな形で社会に戻られると思いますが、この本がより安定した社会復帰につながるための一助になることを願ってやみません。名古屋市総合リハビリテーションセンターセンター長 山田和雄 はじめに
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