8高次脳機能障害の定義1 脳神経系の損傷により種々の症状が出現します。そのなかでも認知や行動に関する障害のことを高次脳機能障害と言います。医学的には失語、失行、失認などの巣症状※として説明可能なものから、巣症状としては説明が難しい記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害を広く含んでいます。 また、厚生労働省が2001年から5年間行った高次脳機能障害支援モデル事業(以下、モデル事業)の診断基準(表)では、後天的脳損傷の後遺症としての記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの症状が日常及び社会生活上の支障の主因となる状態のことを高次脳機能障害と行政的に定義しています。※巣症状(そうしょうじょう) ある脳の領域が障害されて、その担当する機能が失われて起こる症状。1●間瀬光人高次脳機能障害を引き起こすものー発生機序とメカニズム表 高次脳機能障害診断基準(行政的)1.主要症状など① 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。② 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。2.検査所見 MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。3.除外項目 ① 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(1︲②)を欠く者は除外する。② 診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。③ 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。4.診 断 ① 1~3をすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。② 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。③ 神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。
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