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する興味が薄れる。一人の世界を楽しめ、富もありすぎるとよくないことがはっきりわかる。3つ目が、宇宙的意識の獲得といわれるもので、過去から未来へつながる時の流れの中に自分があることを実感できる。思考は自由に過去から未来へと行き来する。生と死を区別する本質的なものは存在しない、死も一つの通過点に過ぎないという感覚が生まれてくるというのです。昔から百寿者(百歳以上の人)は、健康状態の低下が顕著であるにもかかわらず、幸福感が高いことはよく知られていて、エイジング・パラドックスと呼ばれていましたが、その背景には「老年的超越」があったのです。高齢に達するとこのようないいことがある、とポジティブにとらえたいと思います。いい介護を受ければ誰しもが「好々爺」になれます。そしてこの好々爺の状態こそが、老年的超越の境地に近いのではないか、と私は秘かに思っています。いい介護を受けて、好々爺になって、老年的超越を獲得することは、本人にとっても、介護をする人にとっても、一つの目標になるのではないでしょうか。 その目標を達成するためにも、まずは認知症のことを恐れずによく知ることが重要です。認知症のことを知るためには、まずこの本をぱらぱらとめくってみることをお勧めします。次に、介護をする人は、「力を借りる」ということが極めて重要になります。一人の努力で乗り切れるほど、認知症介護は生易しいものではありません。他者の力、介護サービスの力、また認知症カフェのような「場の力」です。「場の力」を広げていくと、認知症に強い地域とはどのようなものかという問題につながると思います。この本は、認知症カフェに集う、患者さんを含む仲間の力の結集によって生まれました。この本が認知症の方の病を抜けるお手伝いができることを、心より願っています。2018年7月東京都立松沢病院 認知症疾患医療センター長 新里 和弘3
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