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9❷高齢者が食べられなくなるさまざまな要因高齢者が食事をとれなくなる場合、そこにはさまざまな原因が潜んでいます。低栄養が進行し、感染症やサルコペニア(16ページ)、寝たきりなどの合併症をきたさないためにも、食べられない原因を迅速に把握し、適切な対応を取ることが大切です。発熱や脱水があったり、呼吸が苦しかったり、全身倦怠感があったりすると、当然ながら食事の摂取量は減少します。食事が食べられない場合、まずは全身状態や基礎疾患の確認を行うことが大切です。心不全などの疾患は、全身性の炎症反応をともなうため、長期間にわたって食欲が減退し、体重も減少して低栄養が進行していきます。このような状態をカヘキシアと呼びます1-4) 。低栄養は、全身倦怠感、食欲低下をさらに助長し、悪循環を形成します。そのほか、逆流性食道炎、胃潰瘍、各種の腸炎などの消化器疾患も食欲低下の原因となります。糖尿病の既往がある症例では、高血糖などにより食欲が低下していることがあります。また、慢性腎不全のため、気分不快などがあり、食欲が低下することも考えられます。脳梗塞などの脳血管障害や、パーキンソン病などの神経変性疾患が1.食べられない背後には多様な原因がひそむ2.全身状態の悪化や基礎疾患で食べられないちょっと一言がんや肺気腫などの慢性呼吸器疾患(COPD)の患者も、全身性の炎症からカヘキシアを発症することがあります。ちょっと一言高齢者は、高血圧症、糖尿病などの基礎疾患を抱えていることも少なくありません。身体機能や日常生活の自立度、認知機能、動脈硬化症の進行度なども、各人まちまちです。高齢者は個人差がきわめて大きいため、食事がとれなくなる原因も多種多様になるのです。3.嚥下障害で食べられない 1章 高齢者と低栄養の危険な関係
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