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3──はじめに──うつさない、うつらない、ひろげない高齢者の感染対策のキーポイント2025年以降は団塊の世代が75歳以上となり、厚生労働省は2025年をめどに「地域包括システム」の構築を推進しています。このような背景のもとで、高齢者施設や在宅ケアの役割はますます重要となります。高齢者に対する倫理にかなった質の高いケアの提供は、入所者や利用者の安心、安全、安楽な生活を保証するものです。しかし特に高齢者施設では、ひとたび感染症のアウトブレイク(感染拡大)が起これば、隔離やレクリエーションの中止、入浴の制限など日常生活が大きく制約され、安心した生活が送れないことになります。さらにそのような環境の変化は、認知症のBPSD(行動・心理症状)の発生や悪化をもたらすことになりかねません。高齢者の感染対策を考えるうえで知っておきたい特徴が5つあります。①加齢に伴う疾患や慢性疾患を持っている利用者が多く、感染症にかかった場合、重症化しやすく、その感染症に特徴的な症状が顕著に表れないことがあること(肺炎を起こしていても高熱が出るとは限らないなど)。②感染症には潜伏期間(感染が成立して症状が出るまでの期間)と感染可能期間(他の人にうつす可能性がある期間)があり、医師の診断を受け、感染症病名が確定してからの対策では感染拡大を防ぎきれないため、ケアの従事者が利用者の症状や“様子”などから判断し、早期に適切な感染対策が必要となること。③高齢者施設の利用者は、急性病院などで治療を受け、さまざまな「薬剤耐性菌」(MRSAなど)を“保菌”(病原微生物を体内に持っているが発症していない)している場合があり、知らず知らずのうちに“耐性菌”が施設内に伝播している可能性があること。

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