501040361
13/16

11地域包括ケアシステムは何を目指しているのか?八百屋さん、パン屋さん、美容院、図書館や公民館など、地域で生活している多種多様な人とのつながりが、含まれています。「なじみの関係」を成り立たせる上で時間的な継続性も大切な条件のひとつですから、「住み慣れた地域」という表現になってくるわけです。施設入所者のなじみの関係は?「もともと近所づきあいはない。貯蓄もあるし、将来は施設に」という人もいるでしょう。その場合は、施設がその人にとっての「なじみの関係」がある場所になります。ですから、その施設で本当に人生の最期を迎えられるかどうかが大切になります。せっかく施設に入っても、体調が変化するたびに別の施設へ転々と移るのは、結局、なじみの関係性をその都度リセットすることになります。リロケーションダメージという言葉があります。生活する場所が変わることで受ける心身のダメージのことです。高齢期の生活環境の急激な変化は、認知機能も含めた心身の機能に影響を与え、結果的にその人の生活の質にも大きな影響を与えることがわかっています。若い人でも同じでしょう。転職や異動で新しい職場になれば、緊張もしますし、ダメージとはいえないまでも心身の負担は通常より大きいはずです。若いうちは、新しい場所に適用できる気力も体力もあります。しかし年を取っていけば、心身にダメージを与えていくのです。まず、地域包括ケアシステムが目指していることは、「なじみの関係性」をできるだけ大切にするため、心身の状態が変わっても、住む環境や周りにいる人をコロコロと変えなくてもいいようにしようということです。

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る