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10妊婦健診における超音波検査の意義 妊婦の健康診査は、妊娠初期から定期的に妊婦を診察し、必要な検査を行って正常な妊娠経過を確認するとともに、異常の予測あるいは早期発見に努めること、さらには保健指導を行うことを目的として、広く実施されています。妊婦の診察については、母体の健康状態だけでなく、胎児の状態も同時に診る必要がありますが、かつては胎児の情報として、胎動の触知や児心音の聴取によりその生存を確認することやレオポルドの触診法によって胎位・胎向を知ること、さらに子宮底長の測定によっておよその胎児の成長を知ることができる程度でした。 超音波検査の産婦人科への臨床応用については、英国のイアン・ドナルドが、1958年に『Lancet』誌に発表したのが最初とされています。わが国では、1970年代に普及し始め、1980年代以降には妊婦健診に欠かせないものとなりました。つまり、その後の妊婦健診は、母体の健康診査とともに胎児の健康診査を同時に行うものとなったのです。 妊婦から得られる情報としては、妊婦の訴えや診察所見、さらに血液検査をはじめとする種々の検体検査や生理学的検査がありますが、胎児については、妊婦自身の知り得る情報として胎動があるものの、検査所見としては、胎児心拍数陣痛図を除けば、超音波検査所見が最大のものです。超音波検査によって得られる胎児情報は、妊娠初期、中期、後期と進むにつれて、多項目にわたっています。これらの多くは、胎児が順調に成長していることを知るために必要であるとともに、異常の予測、あるいは早期発見に有用なものです。また、妊娠の早期から胎児の具体的イメージを直接妊婦や家族が見ることで、生まれる前から児への関心と自覚が高まり愛着形成にも役立つものだけに、現在の妊婦健診、妊婦指導に超音波検査は必須のものといえましょう。助産師が行う超音波検査 分娩監視装置が産科診療に導入され始めた1970年代前半頃には、当時の機器がまだまだ使いにくかったことや判定法も広く知られていなかったこともあって、こうしたME機器は医師が用いるべきものであると考えられていた時期もありました。その後、分娩監視装置は機器の性能が年々改良され、使用法や判定法も広く知られ助産師・看護師が行う超音波検査12

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