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3はじめに 妊娠・分娩は、母体内に宿った受精卵が10カ月かけて子宮内で育ち、産道を通って娩出されるという生物学的現象であり、その過程で何らかの異常が起これば、医療の手が必要であることは確かです。一方、1人の女性が妊娠、出産、育児を経て母となっていくことは、もちろんその夫にとっても、人生というドラマの大きな節目となる物語-narrative-でもあるのです。 20世紀は、科学技術の進歩とともに、医学が目覚ましい進歩をとげた世紀でした。産科学も周産期医学へと発展し、母子の安全性が著しく高まりました。さらに21世紀、少子化が進むなか、周産期医療従事者には高い安全性とともに、女性にとって貴重な経験となる妊娠・出産を、より安全で快適なものへ、より満足度が高いものに導くことが求められるようになりました。したがって、より一層、助産師に力を発揮してもらうことが必要であり、今後、助産師の活躍、なかでも助産師外来はますます求められていくでしょう。 助産師外来においては、妊婦と胎児の正常な経過の確認と正常からの逸脱を疑うことが求められており、その意味で超音波検査は助産師にとってとても力強い味方です。モニター上に動くわが子を見て喜び、時には涙を流す妊婦を見ると、この検査は単に医学的に役立つだけでなく、妊婦や夫にとっても親になっていくnarrativeの上で大きなインパクトを与えるものだと感じています。 本書の初版を刊行して早12年が過ぎました。その間、本書は多くの助産師の皆さんに愛されてきましたが、私たちの社会や医療を取り巻く環境は大きく変化し、さらに変わろうとしています。地域や他職種との連携が当然のこととなり、私たちの施設でも、2013年から妊婦健診セミオープンシステムが始まり、レディースクリニック、産後ケアセンターが2015年に立ち上がりました。また、母性看護専門看護師やアドバンス助産師の活躍、地域保健所との連携も進みつつあります。こうした変化のなかでも、全ての妊婦・家族に安全に出産して、楽しく子育てしていただきたいという願いは変わりません。助産師がいきいきと妊婦と話をし、妊婦がとても満足しているのを見ると、医師の妊婦健診だけでは得られないものがあることを痛感し、改めて当院で助産師外来を開設し根付いたことは本当によかったと思っています。 今回、助産師外来(妊婦健診)をはじめ、病棟や陣痛室、分娩室でも超音波検査を有効に使っていただきたいと思い、本書を大幅に改訂しました。技術的な面は、超音波検査室の超音波検査士が書いています。一部、専門的な内容もありますが、医師には医師としての、超音波検査士には技師としての超音波の使い方があるように、助産師には助産師としての使い方があるはずです。本書を参考に、それぞれの施設のそれぞれの立場で、超音波検査を活かしていただきたいと思います。助産師だけでなく、産科で働く看護師やこれから産科の超音波検査に従事する検査技師、さらに臨床研修中の医師にも、本書を役立てていただければ幸いです。  2018年1月小阪産病院 理事長 竹村秀雄

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