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 1総論妊娠に伴う生理学的な変化………………………………15妊娠後期にHb濃度が上昇するのは、妊娠末期には血漿量の増加は止まるが、赤血球量は増加することによる。 循環血液量増加の生理的な意味は、子宮増大に伴った血管床増加への適応と、母体姿勢の変化による循環血液量の変化への適応、そして分娩時出血への防御的適応とされている5)。妊娠に伴う循環血液量の増加のため、妊娠中あるいは分娩直後に出血が持続している状態であっても、循環血液量の50%が喪失するまで、心拍数と血圧は変化しない可能性がある6)。血圧と末梢血管抵抗の変化 妊娠中の血圧および末梢血管抵抗は減少する。妊娠による血圧の変動を図1-5に示す5)。血圧は妊娠中期まで、収縮期・拡張期血圧ともに減少し、妊娠後半にかけて非妊時レベルまで上昇する。妊娠中期に収縮期・拡張期血圧が減少していなければ、妊娠高血圧症候群を疑う必要がある。 末梢血管抵抗の妊娠経過に伴う低下は、主に性ステロイドホルモンの血管拡張作用により生じると考えられている。特にこの作用が著しく認められる臓器は、子宮の血管床である。このため子宮への血流量は、妊娠第1三半期は50〜60mL/分であったものが、妊娠28週では185mL/分、妊娠末期では450〜750mL/分と増加する7, 8)。子宮血流量の心拍出量に占める割合で見ると、妊娠初期は3〜6%であったものが、妊娠末期には約12%にまで及ぶ7, 9)。このような変化に伴い、妊娠経過に伴う子宮血流量は全身的な血圧に依存する程度が増すため、特に妊娠後期に起立性低血圧や仰臥位低血圧が生じると、心拍出量が低下する結果、子宮胎盤血流量が低下し胎児低酸素血症を惹起することがある。血圧(mmHg)1201008060401201008060406週1216202428323640産後6週妊娠期間(週)    (文献5より引用)図1-5 妊娠による血圧の変動

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