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………………………………12 臨床推論のプロセスは一般的に、①情報収集と主訴の同定、②鑑別診断など仮説の設定、③仮説の検証、④次のステップ(治療やマネジメントの決定)の4段階で進む1)。妊娠における臨床推論の第一段階である、妊娠女性に対する情報収集と主訴の同定を行うに当たり、妊娠に伴う生理学的な変化を理解し、これより逸脱した異常所見を見出すことが必要となってくるため、ここでは妊娠に伴う生理学的な変化について解説する。血液状態における変化赤血球数 妊娠経過に伴う赤血球数の変化については、循環器系における変化で後述する(→p.14〜)。白血球数 妊娠により白血球は約10,000/μL(通常5,000~12,000/μL)まで増加する。多くは好中球であり、この増加は妊娠初期から始まり、妊娠中期・後期には平衡に達する。陣痛開始時から分娩直後には、さらに平均14,000~16,000/μL程度までの増加が見られることがある(図1-1)1)。逆に白血球数が3,000~4,000/μL以下の場合は、汎血球減少症や敗血症ショックなどを考慮しなければならない。1妊娠に伴う生理学的な変化白血球数妊娠週数8121620242832364030012345620,00018,00016,00014,00012,00010,0008,0006,0004,0002,0000(/μL)分娩産褥日数平均値95%信頼限界 (文献1より引用改変)図1-1 妊娠・分娩・産褥における白血球数の変動
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