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 1総論妊娠に伴う生理学的な変化………………………………13血小板数 血小板数は、非妊娠時および妊娠経過中を通じて有意な変動を認めない。重症妊娠高血圧腎症やHELLP(hemolysis, elevated liver enzymes, low platelet)症候群では血小板数の減少も正常妊娠に比し有意であり2)、特に妊娠中の減少の程度が予後と関連する3)。妊娠初期から血小板数が100,000/μL以下に減少していれば、突発性血小板減少性紫斑病など血液疾患を考慮する。なお、血液疾患は妊娠中に発症することもあるので、妊娠高血圧腎症を伴わない血小板減少が見られたら、血液疾患を念頭に置く必要がある。凝固・線溶系 妊娠時は第ⅩⅢ因子を除くほとんど全ての凝固因子の増加が見られ、妊娠末期には非妊娠時の1.5~2倍に増加するが、分娩後は非妊娠時の値に復する。これは、妊娠中に増加するエストロゲンの影響により、肝臓での産生が亢進されるためである。このため妊娠中は凝固系の亢進と線溶系の抑制が認められる。この状態は、妊娠維持や分娩時出血の止血に合目的である反面、血栓症やDICを起こしやすい状態でもある4)。第Ⅰ凝固因子であるフィブリノゲンは、非妊娠時の平均300mg/dL(200~450mg/dL)に対して、妊娠初期から増加し始め、妊娠末期には約50%増加して450mg/dL程度になる。 赤血球沈降速度(赤沈)は、血液を抗凝固薬と混和後、特殊な測定管に入れて1時間垂直に立て、赤血球層の沈降した距離を測定する方法である。非妊娠時は1時間値15mm以下であるが、妊娠中はフィブリノゲンの増加や赤血球数の減少に伴い赤沈は亢進し、妊娠末期では1時間値50~60mmになる(図1-2)2)。赤沈測定の臨床的意義は、産科DICの診断時である。産科DICになるとフィブリノゲンが減少するため、15分値4mm以下、1時間値15mm以下の場合は産科DICと診断して治療を開始する4)。                (文献2より引用)500400300200002550751002040フィブリノゲン(mm)赤沈値(mg/dL)フィブリノゲン量赤沈値非妊娠妊娠週数産褥図1-2 妊娠中および産褥におけるフィブリノゲン量と赤沈値の推移

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