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………………………………5 妊娠・分娩・産褥期の助産診断は、いかなる場であっても母子にとって安全で安心なケアを提供するためのものでなければならない。助産師には、必要な知識、技術、ケアリングの姿勢を備え、またその知識と技術とをより確かなものに高め、ケアリングの姿勢を成熟させる義務がある。 助産師は、妊娠・分娩・産褥の各期に必要な支援、ケア、助言を行う。医師をはじめとする関係者と協働しながら、助産師の実践範囲にある対象の分娩は、助産師自身の責任において介助を行う。妊娠・分娩・産褥期の支援はもとより、新生児に必要なケアを提供するための責任を果たす。この責任には、助産師による説明責任も含まれる。これらのことは、ICMの国際的な助産師の定義に基づいており、専門職としての助産師のケアには、予防、正常な分娩の促進、母親と子どもの合併症の発見、医学的なケアやそのほかの症候や状態に対する適切なアセスメントと、救急・急変対応の実施も含まれる。 今やわが国では、初産の分娩時年齢が平均30歳を超えている。生殖医療技術の進歩と相まって、40歳代で分娩する女性も少なくない。かつて40歳といえば成人病発症年齢であった。年齢とともに増す影響に加え、妊娠と分娩は女性の心身にさまざまな影響を及ぼす。生理的な変化であるとはいえ、生活習慣病発症年齢の時期に妊娠という負荷がかかることによって生じる心身の変化を助産師は見逃してはならない。そのためには、妊娠・分娩期に関連のある疾患や症状を知り、バイタルサインの変化、検査データ、疾患や症状特有の産婦の訴えを見逃すことなく、起こり得る疾患やリスクを踏まえた行動が求められる。 そのためには、「なんか変だな」という感覚を助産師自身の前提知識に基づいて臨床推論し、アセスメントに基づいた異常を早期に発見し、対応することができなければならない。産婦の急変時にはその変化を見逃すことなく、医師はもとより助産師と関係者間でタイムリーかつスピーディな対応を行う。 本書の総論では「妊産婦の力を引き出す支援」「ローリスク出産に潜む6つの落とし穴」「分娩期特有のフィジカルサイン」を紹介する。また、分娩期の助産師の「技」である会陰保護技術を発揮するためには、分娩の三要素を踏まえた助産診断や、順調な経過を促進するためのケアが必要である。また、分娩遷延、難産、性器出血が止まらない、褥婦が意識を失ったなど、そのとき直ちに行うべきことを17の症例とキーポイントで解説する。助産師のコミュニケーション技術や、状況が変化したときの医師への報告の方法などについても、症例を通して紹介する。 2016年7月公益社団法人日本看護協会常任理事 福井トシ子序 文
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