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………………………………10はじめに 産褥期とは、分娩が終了し妊娠分娩に伴う母体の生理的変化が妊娠前の状態に戻るまでの間を指し、その期間は6〜8週間とされている。この時期は、妊娠に伴った母体の変化が元の状態に修復されるまでの期間であるとともに、乳汁分泌が生じ、育児を開始するという大きな変化の時期でもある。妊娠、分娩期に比して医学的なケアを必要とすることは少なくなる一方で、時に重大な合併症を起こし、母体死亡に至る可能性のある時期でもある(表1-1)。 また、近年母体の身体的ケアに加えてメンタルヘルスへのサポートが重視されている。さらに切れ目のない育児支援という観点からも、母体の心身の健康保持の重要性は増している。 母体の状態を観察するにあたり、迅速に対応しなければ母体死亡に至るような重篤な病態も存在することを理解し、その病態を疑うための理解を深める必要がある。本稿では産褥期に起こりうるさまざまな病態について解説する。産褥期に起こりうるさまざまな病態子宮復古不全、産褥出血 妊娠後期に大きくなった子宮は産後急速な子宮収縮に伴って止血し、産後1か月で非妊時の大きさまで戻るが、この正常な機能が障害された状態を子宮復古不全という。器質的疾患によるものとして胎盤遺残、卵膜遺残、筋腫合併や子宮内感染が、機能的な原因として多胎妊娠や羊水過多など過度の子宮筋の伸展が関係するものが挙げられる。胎盤遺残、特に部分癒着胎盤では、分娩後1〜2週間経過してから大量出血を引き1産褥期に注意を要する病態表1-1 産褥早期(1週間)に起こりやすい問題疾 患症 状子宮復古不全産褥熱産褥妊娠高血圧症産褥HELLP症候群産褥心筋症肺塞栓マタニティブルーズ出血発熱、下腹部痛、子宮の圧痛、悪臭のある悪露血圧↑上腹部痛呼吸困難、咳、浮腫、動悸、頻脈、全身倦怠感呼吸困難、胸痛、頻脈、頻呼吸気分↓「大量出血(出血量増)」「血圧低下」「心拍上昇」を認めたらドクターコールその際「出血量(総計および直近)」「子宮収縮の状態」「バイタルサイン」を報告
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